
「アロマを飲めば病気が治る」「ステロイドは毒、脱ステロイドこそ正義」――。
Instagramを開けば、キラキラとした生活感と共に流れてくる「自然派ママ」たちの投稿。しかし、その背後には医学的根拠のない危険なデマと、特定のネットワークビジネス(MLM)の影が見え隠れしています。
今回は、ネット上に蔓延る医療デマの真実と法的リスクについて徹底解説します。
この記事の目次(クリックでジャンプ)
1. 概要:なぜ今、薬剤師が激怒しているのか?
Instagram上で拡散されている特定のMLM企業「ドテラ(doTERRA)」の会員と思われる投稿に対し、「法律違反通り越してもはや集団犯罪」「死人が出る」と強い言葉で警鐘を鳴らしています。
ドテラ社はアメリカ発のアロマオイル販売企業ですが、問題視されているのは、その一部の会員(いわゆる「信者」と呼ばれる人々)による極端かつ医学的に誤った使用法の推奨です。
彼らが広める主なデマは以下の通りです。
- 脱ステロイド推奨:「塗ったら最後」と不安を煽り、標準治療を否定。
- アロマの飲用・原液塗布:「食品添加物だから安全」「フランス式」と謳い、原液を飲ませたり肌に塗ったりする。
- 標準医療の否定:「K2シロップは危険」「粉ミルクは虐待」など、新生児医療を敵視。
2. 詳細・最新データ:薬剤師が突きつける「科学的真実」
感情論ではなく全て「科学的エビデンス」に基づいたものでした。主要な論点を見ていきましょう。
①「ステロイドは悪」という大嘘
インスタ上の信者は「ステロイドはやめろ、排毒(デトックス)せよ」と主張します
「ステロイドは炎症の特効薬。アトピーは免疫の暴走であり、炎症が起きている状態でステロイドを使わないのは、火事なのに消火活動をしないのと同じ」
適切な量と期間で使用すれば、ステロイドは非常に安全で効果的な薬です。「脱ステロイド」と称して民間療法に走った結果、症状が悪化し、取り返しのつかない皮膚状態になってから病院に駆け込むケースが後を絶ちません。
② アロマ飲用の危険性:「自然=安全」ではない
「ドテラのアロマは純度が高いから飲める」「食品添加物として認められている」という主張に対し、「肝毒性・神経毒性がある」「濃度の概念が欠落している」と指摘します。
そもそも、日本アロマ環境協会(AEAJ)や厚生労働省も、精油の飲用や原液塗布は推奨していません。たとえ食品添加物の認可があっても、それは「ごく微量(PPM単位)」での使用を前提とした基準であり、水に垂らして飲むような量は安全基準を遥かに超えています。
また、信者たちが根拠とする「フランス式アロマテラピー(医療としての利用)」についても、現地の医師や薬剤師の厳格な管理下で行われるものであり、素人が自己判断で行うものではありません。
③ 衝撃のデータ:他社製品の方が「高純度」だった?
ドテラ信者の最大の拠り所である「ドテラだけが100%純粋(CPTG基準)」という主張。これに対し、衝撃的な比較データが提示されました。
ラベンダー精油の有効成分(酢酸リナリル)含有率比較
- ドテラ(doTERRA):約38.2%
- プラナロム(Pranarom):約45.8%
なんと、メディカルアロマの老舗である「プラナロム社」の方が、有効成分の含有率が高いという結果が出ているのです。「他社の方が安くて品質が良い。ドテラの『純度が高い』は自社基準に過ぎない」と結論づけています。
④ 赤ちゃんの命に関わる「K2シロップ拒否」
最も悪質なのが、新生児への「K2シロップ投与拒否」の推奨です。ビタミンKは、血液を固めるために不可欠な栄養素ですが、新生児は欠乏しやすい状態にあります。
K2シロップを飲ませないと「ビタミンK欠乏性出血症」を引き起こし、頭蓋内出血などで死亡や重い障害が残るリスクがあります。これを「不自然な化学物質」として拒否させる行為は、まさに命に関わるデマと言えます。
3. 法的観点・リスク:薬機法違反と「好転反応」の罠
これらの発信は、医学的に誤っているだけでなく、日本の法律にも明確に違反しています。
薬機法(旧薬事法)違反
医薬品ではないアロマオイルやサプリメントに対し、「アトピーが治る」「デトックスできる」「免疫が上がる」といった効果効能を標榜して販売・勧誘する行為は、薬機法第66条(誇大広告等)違反にあたります。
「好転反応」という言い逃れ
アロマを使用して湿疹が出たり体調が悪化したりした際、信者たちは「それは好転反応(デトックス)だから続けて」と指導します。しかし、「好転反応」という言葉を健康食品や雑貨の説明に使うこと自体が、薬機法で禁じられています。
体調不良は単なる「副作用」や「アレルギー反応」である可能性が高く、使用を継続させることで重篤な健康被害を招く法的責任(不法行為責任)を問われる可能性があります。
4. 今後の展望・未来予測:情報リテラシー格差が命を分ける
2026年現在、AIによるファクトチェック機能は進化していますが、クローズドなコミュニティやSNSのDM(ダイレクトメッセージ)で行われる勧誘までは規制しきれていません。
今後懸念されるのは、「標準医療への不信感」を利用したビジネスの巧妙化です。医療費削減やオーガニック志向の高まりを逆手に取り、「病院に行くと薬漬けにされる」という不安を煽る手口は、形を変えて続いていくでしょう。
しかし、専門家が「名指し」で科学的根拠を提示して反論する動きも加速しています。私たちは「誰が言っているか(インフルエンサー)」ではなく、「何を根拠にしているか(一次情報・公的機関のデータ)」を確認するリテラシーを持たなければ、自分と家族の健康を守れない時代に突入しています。
5. まとめ
- インスタ上の「アロマ飲用」「脱ステロイド」推奨は、医学的根拠のない危険行為。
- 「ドテラだけが高品質」という主張は、成分データを見る限り疑問符がつく。
- 「好転反応」「デトックス」という言葉が出たら、薬機法違反の詐欺的セールスを疑うべき。
- 赤ちゃんのK2シロップ拒否など、命に関わるデマには絶対に耳を貸してはいけない。
体調に不安がある場合は、インスタのインフルエンサーではなく、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
